桜の咲いている期間は短い。
1年のうち一週間だけにも関わらず、桜にまつわる歌は想い出は多い。
その薄淡い色に日本じゅうの人が魅せられ、酔わされるのだろうか。
この時期は日本の南から北までチェリーラインが駆けめぐる。
花粉分布図が幅を利かせていてもそのピンク色は別格なのだ。
日本は縦長な地形なので、黄金週間でも北へ行けば桜が愉しめる。
桜を追いかけて北へ旅をするのって、浪漫飛行な感じがする。
むかぁしの私は桜の花に見向きもしなかった。
私にとって桜はおよそ「花」という概念から外れていた。
パッと観てわかりやすい、大きな花弁の優雅な姿をしたものに魅かれた。
バラやチューリップ、グラジオラス、カラー、スイートピー、トルコキキョウなどを好んでいた。
その後、華道に触れ、年を重ねてくると見る目が変わってきた。
日本の四季を愉しむようになると木に咲く花が好きになった。
桜、木蓮、梔子、沈丁花、金木犀、椿、こでまり、ツツジ、紫陽花、藤・・・。
桜って「男性」に例えられる花だという。
そう聞いた時、「ああそうか」と納得した気がしたっけ。
そしていっそう好きになったような気がする。
木に咲く花はただでさえ凛とした雰囲気なんだけど、可憐な花が男性というのは新鮮だった。
嫉妬に狂った男性は手がつけられないけど、桜にも狂気を感じさせるような妖しさがあると思う。
「嫉妬」も「妖しい」も女ヘン。
女性特有の要素が加わるとやっかいなことになるのかな。
相反するものが同居しているのって魅力的。
少年っぽさと少女っぽさが同居している雰囲気って惹かれたりするし、和洋折衷も好き。
花冷えの中、ねずみ色の雲の下で冷たい雨に蕾が震えている様子は胸がシクシクする。
ただの一輪も咲いていない蕾だけの桜の木が、細い木の枝の先までぼうっとピンク色に包まれている。
木全体が春の生命力の強さなんだと思い知らされる。
今にも咲きそうな気配をまとっている桜の木を観るとわくわくする。
満開に咲き誇る桜もいいけれど、一歩手前の感じもいい。
散る様もまた風情があるし・・・。
この時期は気持ちが不安定にざわりと揺れるのはやっぱり桜にも責任があるといいたい。
私の心の未熟さを棚に上げて桜のせいにしてしまおう。
桜が共犯者なんていいじゃないですか。
そんな私は桜餅が食べれない。あの独特の風味が苦手なのだ。
食いしん坊の私だが、どうやら桜は観る専門。
愛でて満足、悔い(喰い)はナシ。