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龍の寝床


龍の寝床

奥多摩へ行った。釜飯を食べに。今シーズン最初の栗釜めしを求めて。

時間の感覚さえ狂いそうな曇天のなか、山奥へどんどん入っていった。

青梅を過ぎ、奥多摩路を行く頃にはアスファルトが黒く濡れていた。

東京地方、今日は雨なんて降っていないぞよと思いつつ山肌に目をやった。

幾重にも連なる山々の間からもうもうと白い煙みたいな幕が空へ立ち昇っていた。

雲でも降りて来ているのかと思った。

いつも思う。奥多摩に向かっていると山がくねくねと重なり合って奥へを誘っているようだ。

白いヴェールがかかっている今日は、その山々の際に沿って龍が寝そべって休んでいるような錯覚さえ覚えた。

昔話に出てくるような時代と場所にいるような気がする。

まだ夕方なのに薄暗い山奥に、隠れ家のようにある店に着いた。

辺りはしっとりと濡れていて、たったいま雨があがったような匂いがした。

雨水に洗われた建物と庭の自然が、くっきりと輪郭を現したような天然色だった。

連休後の平日で、店はいつもよりも早仕舞いをするというが、客は少ないながらも賑やかだった。

栗釜めしと焼き鳥に舌鼓をうち、その旨さにしみじみと感動。

定食についてきたおまんじゅうを食べきれず、そっとハンカチに包んで持ち帰ることにした。

ここは量も満足できるくらい多い。全部食べきると苦しい・・・。

会計を済ませて外に出た。山に囲まれた立地にここはある。

山のあちらこちらから白い雲が行く筋も出ていた。

さっきまで降っていた雨が山肌に染み込み、水蒸気となって空へ昇っているのだろう。

その光景を観ているとなんだか許されているような気がした。

完全な思い込みだ。空気を大きく吸い込んだ。柔らかい空気だった。

家に帰ってからお茶を淹れて持ち帰ったまんじゅうを食べた。

皮がもちもちして歯ごたえがあり美味しかったが、

あの店で感じたような心が震えるような感動はなかった。

下界へ降りてくると途端に色褪せてしまうような

不思議な魔法にかかっているのかもしれない。

帰ってくるとすぐにまた行きたくなるような

そんな場所であり店なのかもしれない。

そしていつも、今度はアレ(他のメニュー)食べるぞー☆

と思うのに結局定番を頼むという不思議な行動をとってしまう。

いつまでたってもメニューを制覇できない妖しの店でもある。


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