京都編 最終
空腹のまま京都市役所を後にして次の行き先を目指す。
バスや地下鉄の発達している京の街だが、今回はけっこう歩いている。
わざわざ盆地の夏を実感するような行為をしなくてもいいのだが、都合のいいところに駅はない。
地下鉄に乗り、京都の中心地である超繁華街へ出る。
「京都に来たならやっぱりこの通りを歩きたいでしょ」
八坂神社から始まる大通り沿いにはたくさんのお店が連なっている。
さすがに賑わいがあり、車も多い。
ここまではいわゆる穴場の場所ばっかり巡っていたけど、せっかくの観光都市。
活気のある賑やかさを感じないと何か物足りなくなる。
しかしここに来てもまだ外国人観光客が少ない。
よっぽど京都の夏は外国人には敬遠されているんだろうか。
余談だけど、夏のオリンピックを日本に誘致することは大変だと思う。
だいいち、どこで競技するんだ?
北海道とかならまだしも、台風もバンバン来る梅雨の時期にオリンピック競技なんて・・・。
体調崩して故障したりお客さんが不愉快になったりしそう。
外国の人に限らず、北海道出身の人は梅雨に弱いような気がする。
夏のオリンピック、福岡は残念でした。でも東京も無理な気がする。
世界中の人を呼ぶなら国際的に有名な場所でないと・・・。
京都ならみんな喜んで来たがりそうな気がするんだけど、この暑さでは何をかいわんやだ。
じっとりと汗をまとわりつかせながら、通りを歩く。
なんか若い人が多い。学生さんや勤め人さんたちが普通に歩いている。
目指すお店に近づくといや~な気分になった。
信じたくはないが、人がいっぱいいるような気がする。
隣に居る相方をとりまくオーラがゆらりと揺れた^^;
2階まで続く行列が通路の車道側にぞろりと続き、何人いるかパッと見でもわからない。
さすが茶寮都路里。
お店の人がクーラーボックスから凍らせたオシボリを行列の人ひとりひとりに手渡していた。
「すいません。あと20分くらいです」
行列にひるみ、2~3回行き過ぎてから意を決して並んだわしらに可愛い京都弁で言う。
うそつけ~☆
でもしょうがない。
ここで帰ったら、東京では汐留で二時間以上待たねばならぬ。
「まさか並ばないよね」
怒りを凍らせプレッシャーをかけてきた相方に気づかない振りをした。
ぜったいここで喰って帰るのだ。
長年の夢をここで叶えてやる。(・・・たいした夢じゃないなぁ☆)
ただの喫茶店にここまでの覚悟で並ぶ観光客ふたり。
並んでいる間もぶつぶつと怒りを小出しにする相方。
東京で並ぶのよりはこちらで済ましたほうがいいと思ったのか、OKが出た。
待たされるのが何より嫌いで、東京では5分でも待つのは嫌な相方。
地球を救える3分なら待てるのだろうが、時計を見ないことにする。
オシボリははやばやと溶けてしまっていた。
生ぬるくなってしまったそれを手でこねまわしながら、ひたすら前に進むのを待った。
ショーウィンドーにあるメニューを見ながら何にしようかと話題をふる。
無理やり見つけないと話題なんかなくて、険悪なムードになってしまう。
食べ物の模型を見ながらあれもこれも食べたくなってくる。
待っている時間のイライラに比例してどんどん気持ちが大きくなってくる。
こうなりゃ食べたいもの食べてやる。
や~っと順番が来た。
店内には人が狭い感覚で詰め込まれていたが、あっさりと席に通される。
みんな嬉々として大きなものを召し上がっている。甘いものはベツバラだ。
相方は私の食べたいものを頼みなされと言う。
もちろんです。
特撰パフェ 温かいお茶付き
とにかく美味しかった。抹茶カステラがすごいけど少ししかなかった。
抹茶色のクリームが冷たくなくてコクがあった。
フルーツは正直なくてもよかった。
カキ氷 温かいお茶付き
氷がえらく美味しかった。びっくりした。
上にのっているアイスがメチャうま。ほうじ茶アイスとあとひとつなんだろう?
フルーツはなくてもいいのに…。
口の中が冷たくなりすぎて、ゼリーの味がわからなかった。
茶そば
ねっとりとしたツヤがある濃いみどりいろのおそば。
なんとも通なメニューを選んだもんだ(セレクトby相方)。
まぁお昼食べてなかったからね。
「味どう?」(蕎麦を食べる相方に聞いてみた)
「う~ん」
「おいしい?」
「う~ん」
「・・・・・?」
「たぶん・・・いやきっとうまいんだろうけど、よくわからない」
「(ハア?)」
私ら二人は大の蕎麦好きである。
相方から器を受け取ってひとすすり。
「☆?×◆!」
もうひとすすり。ふたすすり。
相方は苦笑い。
「・・・麺の喉越しはいいし、風味もいいんだろうけど・・・」
言葉につまった。この舌の感触と喉越しは美味しいお蕎麦のそれである。
しかし、めんつゆの味と細かいのりの風味が強く、
冷たいパフェやカキ氷の後で蕎麦の繊細な味だけが消えていた。
「たぶんこのお蕎麦、きっと美味しいはずなんだけど・・・」
食べても食べても味の実感がわかない。
うまいお蕎麦の喉越しはするのに、霞を食べているみたいだった。
いっそめんつゆでなく、生のままかお塩か海苔だけで食べたほうがいいんじゃなかろうか。
さすがに3品を食べ終える頃にはお腹がいっぱいになり、それにつれて身体が冷えてきた。
温かいお茶がついているのはそのためか。
店内は冷房が効いていて冷たいものを頼むと寒すぎるくらいだった。
トリハダを立てながら食べ終え、ここで熱いお茶が欲しいんだがと思いつつも、
流行っている店にそこまでの要求は無謀だと席を立った。
外に出ると熱風がむわんと身体を包んだ。
だいぶ陽が傾いてきて、建物の陰が長くなっている。
原了郭が道を挟んだ反対側にあるのでそこで黒七味を買いたかった。
店に行くとお休みだった。一保堂茶舗といい、強気だな。
夏に限らず京都は強気な町なのかしら。
まぁお休みや改装はどこにでもあるけど。
観光客の立場になるとこちらも強気の姿勢になるみたいだ。
同じ通り沿いにあるデパートの地下に売っているらしいのでそこで買うことにした。
陽射しがまぶしい。
強烈に目に飛び込んでくる。
もうすぐ夕暮れ時が近い。
橋の上から遠くを観た。
相方はこの景色を観てずいぶん昔と変わったと言った。
相方は関西にいたことがあるのでその頃と比べているのだろう。
言葉で聞いているのと実際の風景はものすごく違うんだろうが、
私にとっては想像でしか思い浮かべることができない。
けれど現実はたいてい想像をはるかにうわまわる。
それがいいことであっても悪いことであっても。
現実を知らない私は少しうしろめたさを感じた。
今日行った京都は今まで自分が行ったことのない場所ばかりだった。
今この時に見た景色は私だけのものだ。
はじめての季節の京都は、たった一日だったけど楽しかった。
よそゆきじゃない場所に通ったみたいでまた京都が好きになった。
まだまだ行きたいところがありすぎる。
今度はいつ来れるかなぁ。
黒七味の値段にぶつぶついう相方にそうだね高いねと言いながら駅に向かった。
(京都編 完)