心の基準点
昔大好きだった映画「ふたり」。
大林宣彦監督の新・尾道三部作の第一弾。
「尾道三部作」
転校生 1982年・公開
時をかける少女 1983年・公開
さびしんぼう 1985年・公開
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「新・尾道三部作」
ふたり 1991年・公開
あした 1995年・公開
あの、夏の日 1999年・公開
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尾道三部作としては「転校生」や「時をかける少女」が有名だけど、
私は「ふたり」が一番好きだった。
主題歌もとても良かったからかもしれない。
なんてったって久石譲さんだし。すごく好き。
この映画を観て広島の尾道にとても憧れた。
一度も行ったことがなかったくせになぜか懐かしくって、
ちょっと凹んだり疲れたりするとこれを観て元気になった。
日本の生活とか季節感がするっと入ってくるし、
この映画に出てくる人たちのきちんと生活している感じが好きだ。
毎日の生活は平坦なようでいていろんなことの積み重ねが続いていくことで、
何がきっかけでどういう方向へ行くのかはほんの少しの差だと思う。
時間はひきとめておけなくって、痕跡は何も残さないけれど
通り過ぎた証は生きているものの中にあるんだなぁと感じる。
だからいいかげんに過ごしたり、自分を見失ったりする時に観ると
映像の中の世界がまぶしくてしょうがない。
まるで町全体がまるごと一個のセットみたいな尾道。
狭い道も急な坂道も古い町並みも信じられないくらいのロケーションと海。
空気の清浄さや光りの粒がきらきらと光っているようで。
きれい過ぎて、一生懸命すぎて、その時の自分がうしろめたくてせつなくなる。
もうずっと前の時代の情景で、今の時代とはずれてしまったかもしれない。
でもなぜか懐かしい。
その土地に行ったことがなくても同じ空気を私は知っている。
同じ光りの中で私は過ごしたという感じがするのだ。
大人になってから尾道に行った。
尾道は映画と同じようには私を迎えてはくれなかった。
旅人には異なるルートが用意されているかのようだった。
つれないけどそれがまた後を引いてしまうのよね。
この物語は最後にすっきりと浄化されたようになる。
ああ終わってしまったという少しの余韻を残して。
そしてまた頑張ろうと思えるようになる。
私の中ではそんな映画。