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寄生獣レビュー


※2年前に書いたレビューを元にUP

この「寄生獣」の世界観はすごく衝撃的なものだった。

どっかの学校にひっかかって適当に授業をやっている先生、お遊び気分で学生をやっている人たち。
そんな輩にこの「寄生獣」を読ませてレポートを書かせたいくらいすごい作品だ。

はじめてこの作品を読んで感動してしまった感覚が今も忘れられない。
読んでいる最中に少なくとも3回くらい泣きそうになった。(ちなみに「ワンピース」もそのくらい)

この作品の奥深さは教科書に指定してもいいくらいなクオリティの高さだと私は思う。

この作品は、絵にだまくらかされて読まないというのはすごくもったいないことだと思う。
ま、私も最初のうちはななめ読みで、「名作だよ」というオススメがなかったら途中で挫折していたような絵で、
しかも微妙に内容が「赤い爪あと」に似てもなくないかというような気もしていた。
がしかし、読み進めていくうちに、「こりゃけっこう深いテーマを扱っているかも?」と思えてきて、
あとはどっぷりはまってしまったのです。

今思うに、テーマを伝えるための方法、というか
包装紙やリボンがどんな素材でどんな色かは大筋には関係なくて、プレゼントの中身が大切なんであって、
歌詞やメッセージを伝えるのに、ロックだろうがレゲエだろうが演歌だろうがニューミュージックだろうが、
いいものはいいのだ。

しかしこの作品、人が尋常じゃなく死ぬので(しかもひどい死に方殺され方!)、苦手な人は面白さを味わう前に
ドロップアウトするかもしれないが、それももったいないことだと思うので頑張って読み進めて欲しい。

この作品は間違いなくSFマンガとして考えると最高峰であり、ここ十数年で間違いなくナンバー1の作品だと思う。

希望としてはCGなどを駆使してぜひ映画化をして欲しいものである。(※ハリウッドで映画化が決定しているらしい)

でも実写化するのならよほど慎重にしないと「模倣犯」みたいになりかねないので、注意して欲しい。

日本が世界に誇る作品と成り得る作品なので、実力のある監督や脚本家に携わってもらいたいものである。

地球は美しいと思うか?パラサイトはたずねる。
地球ははじめから泣きも笑いもしないとからと、「地球のために」という人間が嫌いだという。

寄生獣は、人間という一種の生物のみが自然保護・動物保護というのは、人間の目線のみからみた歪んだ正義であり、
生物全体のことを考えるのならば人間という一種の繁栄を考えるのをやめるべきで、そのためには人間の天敵である
「パラサイト」を大事にすべきだと説く。

「パラサイト」は、”我々は何の目的で生まれてきたのか”と自分に問いかけながら生きている。

ひとつの疑問が解けるとまた次の疑問がわく。
始まりは何なのかそして終わりは何なのかを求めて、ただずっと歩いて見極めようとしている。
しかしそれはどこまで行っても同じかもしれない。
歩くのをやめてみるならそれでいい。
全ての終わりが告げられても「ああそうか」と思うだけ。
その姿は怠惰な人間よりも崇高な精神を持っている、と思うのは乱暴だろうか。

「パラサイト」は、人間を食べる。
しかしそれは生物全体として考えるのであれば何ら悪いことではなく、至極まっとうな自然の理ではあるまいか。
地球上の全ての生物が共存するという点においては、人間が間引きされるというのは最も有効な手段である。

本の中で誰かが言っている。「パラサイト」の立場に立った人間が言っている。

「もうしばらくしたら”殺人”よりも”ゴミのたれ流し”の方がはるかに重罪だということに気づく」

「地球上の誰かがふと思ったのだ。生物の未来を守らねばと」

人間に寄生し、生物全体のバランスを保つ役割であるパラサイト。
人間こそが地球を蝕む寄生虫(寄生獣)だと叫ぶ。

生き物全体からみれば人間が毒で、パラサイトは毒を消す薬である。
「どちらの生命が重いか」を決めるのは誰の権限だろう。

人間の心には人間個人の考えがあり、人間のものさしをつかって人間自身を蔑んでみたって意味がない。
人間自身を愛さずに、地球を愛するという行為は矛盾以外のなにものでもない。

しかし少なくとも人間には「殺したくない」と思う心はある。
その心こそが人間に残された最後の宝ともいうべきものかもしれない。

田宮良子も後藤も、脳はパラサイトである。
主人公である新一は、ミギーと二人で共存しているからこそ生き長らえることができたのだ。

ミギーは知識を習得し、知識も勇気も持っていたと思う。
孤独感を抱えていたミギー。
いつも熱心に勉強していたミギー。
思い出すと涙が出そうになる私は、パラサイトに侵食されているのだろうか?

田宮良子は妊娠していた子供を生んだ。そして子供を持つことにより、変化が起こる。
自分でもわからないなりにその変化に対応しようと(大学で講義を受けたり☆)していくパラサイト良子。
最後に子供を守り、その子供を新一に託して死んでいった姿は母親として、人間としての行動だった。
ミギー(パラサイト)には理解しがたい行動だったらしいが、それはパラサイトの可能性だったのかもしれない。

この作品は不朽の名作である。
読む人によっていくつもの側面を見ることができ、考えることができると思う。
登場人物たちの言葉に注意して、一生懸命読み取って欲しい。

この地球の未来が限られているのか、おぼろげに感じられる今日この頃なだけに、またこの作品が評価されて欲しい気がする。

寄生獣(1990~1995)岩明均:講談社
【新刊】 寄生獣 [完全版] (1-8巻 全巻)


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