よく晴れた日曜日の遅い朝。
246を行き交う車の音も、この時間はまだそれほどでもない。
せっかくの休日なのに目が覚めてしまい、仕方なく起きることにした。
顔を洗い、メガネをかけて歯ブラシを咥えながら窓を開ける。
梅雨に入る前の、1年のうちいちばん気候のいい時期だ。
遠くには公園の緑が青々としている。
空気を思いっきり吸い込む。ミントの味がいっそう強く、清々しかった。
Tシャツにチノパン、エルベ・シャペリエのミニトートに、財布とリップそして読みかけの文庫本を放り込む。おろしたてのシューズを履いて外に出た。
246を渡り、大学の正門の前を通り過ぎると公園の入口が見える。
近くにある昔からのパン屋で飲み物とパンを買った。
派手さはないけど地味な定番のパンと甘味の少ないプレーンな豆乳。
木漏れ日が差している並木道の歩道を歩く。
犬の散歩やジョギング、サイクリングをしている人たち、スケボーやローラーブレードを練習する若者、CDを持ち込み芝生の上で寝転びながら本を読む人など、思い思いのスタイルで時間を過ごす人を観ながら公園の中を突っ切っていく。
遠い向こうには何人もがテニスラケットを振り、壁うちをしている。
かなりうまい人もいれば、うまく返ってこないボールを追いかけてばかりの人もいた。
プールを傍目に陸橋を渡り、階段になっている場所に着いた。
車線の多い道の両脇には路上駐車の車がずらっと並んでいた。
降りてくる人はファッション性の高いものを身につけ、洗練されている雰囲気の人が多い。
車のナンバープレートから、遊びや犬の散歩のためにだけ遠方からここに来ている人もいるのが見てとれた。
ここにはそうさせるだけの緑がある。空気がある。空間がある。
バスケットのゴールが取り付けられた壁の隣にある階段に私は腰を下ろした。
精神的に疲れたとき、私はよくここに座り、ぼーっとする。
パンを食べ、読みかけの文庫本を読んだり、バスケットをする人たちや犬の散歩をする人たちに目をやるのだ。
朝早くだったり、昼下がりだったり、夕方だったり、思いついた時間に、重くなったココロを抱えて私はよくここに来る。
慌しい日常生活の中で、ここはぽっかりと空いたリセットの空間なのかもしれない。
*****
今は遠くに来てしまった。今住んでいる場所に近い公園はお金を払わないと入れない。
ああ、あの公園も周りはずいぶん変わってしまっただろうな。
また行くことがあるのかなとちょっと思った。
行こうと思えばいつでも行ける。
あの頃の自分がちょっと眩しい。
今よりも悩みも苦しみも多くてジタバタしていたけど。
もっと年をとって、余計なものをそぎ落としたら行ってもいいような気がする。
行けないと思うのは自分の心の問題なんだろうな。