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香港


香港の風

あれは香港が中国に返還される前の年。

バーゲンシーズン直前、私は香港にいた。

平日から週末にかけて観光客も増えてゆく。

12月に入ると一斉にバーゲンが始まるのと相まって街中が活気付いている。

香港の年末はクリスマスのイルミネーションのせいもありとても煌びやかだ。


悪の巣窟と名高い九龍城が観たかったのに間に合わなくて、それだけが心残りだった。

それを除けば、イギリスの影響を色濃く継いだオリエンタルな香港が好きだ。

もともと明治・大正の雰囲気が好きで和洋折衷を好む私だが、
香港の持つ東洋と西洋が複雑に入り混じった歴史がまだ現在進行形の勢いがある香港の空気は強烈に魅力的なものだ。

24時間街が生きている。

立っているだけでその勢いがなだれこんでくる。

清廉なだけではこうも惹きつけられることはないだろう。

裏に潜む隠微な空気がと退廃した危険な香りがするからこそだと思う。

日本では分厚いコートを着込まなければ出歩けないその時期に、
もったりと重い空気が蔓延している香港では半そでで歩けてしまう。

スーツで過ごすことが基本のこの国は一年中クーラーが効きっぱなしで、来る度にさすがはイギリスだなあと思う。

ペニンシュラではスコーンとクロテッド・クリームでハイ・ティー。

男性はスマートに女性をエスコート。

アジア圏でレディ・ファーストが身についているなんて素晴らしすぎる。

香港では英語名を自分で付けることができるらしい。

もし私がその権利を持ったなら、おそらく漫画に出てくるような滑稽な名前をつけてしまいそうだ。

私はファースト・ネームで呼ばれる経験が少ない。

それがいいのか悪いのか。

真剣に考えたことがないのでわからない。

少なくとも今から呼ばれることになったとしたら、トリハダを立ててそう呼んでくる相手を避けてしまうかもしれない。

かわいくない人間になってしまったものだ。


香港で過ごす時間はとてもエキサイティングだ。

視界に入る全ての物が極彩色で想像の範疇を超えてしまっているような気がしてくる。

海と山の両方と、都会の喧騒をもプレゼント。

口に入るものは全てが美味しくて、竜宮城に足を踏み入れてしまったみたいだった。

それくらい自分をとりまくものに翻弄されてしまっている。

よく当たると評判の黄大仙。

祈っている人たちは大勢居て、観光客らしい人を除くとみんな真剣だった。

山のような供物を捧げ、座り込んで土下座して祈りを捧げる人もいた。

何か一つだけ願いごとをしながらおみくじの棒を引く。

意識したわけではないが、自然に一本だけが飛び出てくる。

その棒に描かれた番号を覚えておいて、後でその番号の紙を買い、占う人に解説してもらうのだ。

香港は広東語がポピュラーで、大学時代に習った北京語は役に立たない。

香港では英語も公用語で、お店などによって日本語も大丈夫だった。

この時の占いの人は広東語オンリーだったらしく、旅行会社の人に通訳をしてもらう。

私が占ってもらいたかったことは、紙に書かれた故事の内容からもうっすらとわかっていはいたが、確認の為に訳してもらった。

(結果としてこの占い(願い事)は当たり(叶い)ました)

ちっともかなう要素がなかったのでほとんどあきらめていたが、この結果にとてもびっくりした。

占いのブースは数多くあり、人気の占い師もいるという。

またいつか来たいなと思った。

香港は風水の街。

建物にも興味深いものが多い。

この街に住んだら刺激がたくさんありそうだと思う。

美味しいと評判のお粥やさんを探して歩いたが、どうにも行き着けずに断念した。

泊まっているホテルの近くに庶民的な食堂があったのでそこに入り、ラーメンを2種類注文した。

ひとつは香港ぽいちゅるちゅる系卵麺のもの。

もうひとつは「どうみても日本の袋入りインスタントラーメンだろ」みたいなパサパサ麺。

余談だが、香港では日本の袋入りインスタントラーメン「出前一丁」が大人気だった。

逆輸入みたいな感じで売られているし、ラーメン屋さんでも注文すれば作ってもらえるのだ。(しかもいいお値段)

香港は不思議なところだった。

場末で食べるラーメンやお粥のレベルが恐ろしく高いのにめちゃめちゃ安い。

そのくせ、全然レベルのひくい日本の食べ物が持ち上げられるのだ。

食べ物は明らかに香港のほうが美味しい。

道端で売っていたり、屋台のものでさえ日本の高いお店で食べるものよりも美味しいのだ。

調味料が違うのか、素材が違うのか、料理人の腕が違うのか、火力が違うのか。

なぐさめのように出てくるまるで迷信みたいな

「料理を美味しくするのに大事なのは…愛情というスパイス♪」(摩邪ふうに☆)

という標語が白々しく響いてしまう香港。

恐ろしい。

現実とはそんなもんです。

ああでもほんとに美味しい香港フード。

香港の家賃の高さ・物価の高ささえなければ香港に住みたいと思った。

満腹になりホテルまでプラプラと歩いた。

手頃なホテルが多い地域は夜でも危険は少ない。

海外での夜遊びの仕方がわからないので夜の時間がもったいないが、オプションで観光フェリーに乗って晩御飯を食べたり、夜景を観に行くこともできる。

しかし旅行中の昼間はバスや電車や地下鉄を使って大移動するので知らぬ間に疲れが溜まってきてしまう。

なので夜は大人しくホテルに帰り、近くのコンビニへ行ったり、ロビーで一服したりして過ごすのがラクだった。

アットホームなホテルに滞在すると
(そーんなにグレードが高くなくてお手頃値段、リピーターや乗客が多く、ホテルマンも親切、みたいな☆)
エレベーターに乗り合わせた外国人観光客とかと言葉を交わしたり(英語の発音を教えてもらったり^^;)、ホテルマンに近くのスーパーの情報を聞いて夜食とお土産の買出しに出て行ったり。

けっこう楽しい。危機管理がないともいうが…。まぁ日本人はこんな感じですよね?

翌日も日中を忙しく過ごし、夕食は前日行く予定だった店でとった。

陰陽道でよくみる陰と陽の形にわかれたスープがメニューにある店。

あわびのステーキがあり、上海蟹もちょうとシーズンだった。

旅行中で体力が落ちているので、魚介類にアレルギーを持つ私は大事をとってあわびをひと口だけにしておいた。

友人はカニを頼み、私のあわびも食べた。上海蟹の美味しさ安さに
「買って持って帰ろっかな」と言っていた。

さすが本場。でもそれって輸入になるんじゃ・・・

上海蟹の香港でも価格はめちゃめちゃ安い。一山いくらって感じ。

その辺の通りのどの店にも上海蟹が山のように積まれていた。

カニ好きなら誘惑されて当然だろう。でもナマモノなので友人はあきらめていた。

香港は化粧品が雑貨のように安いのでたくさん買う。

洋服も日本には入らないブランドのものがあるので買う。

靴も買いたかったが、最後の最後であきらめた。

日本語のできる店員さんがずっとつきっきりで見てくれて何足も持ってきてくれたのだが、日本で履くとなると微妙なデザインが多いのだ。

その時の日本の(というか自分の)流行はコンサバだったので買わなかった。今ならオールオッケーなのに…。

海外へ行くと必ず2足は買う私(サイズがでかいから)なのに泣く泣くあきらめた。他のものが豊作だったのでヨシとする。

香港ではブランド品もお安く買える。

その時はグッチのバッグがすごく売れていて、友人もグッチの財布を買っていた。

すれ違う日本人観光客はほとんどグッチのバッグを持っていたような気がする。

日本で買えないものかまたは新作だったのかもしれない。

私は他と比べると割高なブランドのものを買ってしまい、意味がなかった。

わざわざしなくてもいい損をするとやっぱり悔しいものである。

ブランドもんごときに左右されてはたまるもんでもないが…。

めったにブランドものを買わない私はちょっと凹んだ。

若い頃にはそんなこともあるものさ。

今の香港はどんな感じかなぁ。

香港に降り立ったときに吹き付ける風の匂いは忘れられない。

ほんとうに中華というか、アジアンな香りで、お世辞にもいい匂いとは言えなかったが、今思うととてもなつかしい。


中国に返還されてからいろんな意味で怖くて行ってないが、混沌とした雰囲気と勢いのある空気は残っているのかな。

素晴らしくよそいきの顔をした町並みや整形した美人のような場所よりも、ゴミゴミとして入り組んだ計算のないところを歩きたい。

英吉利らしい空気はもうなくなってしまったのかな。

それはそれでまたおもしろそうだ。


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